賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ【結論 どっちも大事】

『賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ』

 

 ドイツ帝国の鉄血宰相とも呼ばれた初代宰相

 Otto von Bismarckオットー・フォン・ビスマルク (1815– 1898) が言ったとされる名言ですね。

 

 既に多くの人が解説や考察を述べていますが、これは非常に大切なことですので、私も自分なりの表現で改めて解説してみることにしました。

 

 どうかお付き合いください。

 

 

結論 どっちも大事

 

 結論から言うと、歴史に学ぶことも経験に学ぶことも、両方必要なことです。

 どちらかを頑張ればいいというものではありません。

 

【勉強から逃げるな】

 勉強というのは、いうなれば歴史(他人の経験)から学べるものです。

 昔の数多くのえらーい学者さんが遺した知識を、効率よく吸収できるありがた〜い代物。

 

 つまり、こういうことになります。

 

 賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ 

 = 勉強(歴史から学ぶこと)をまったくしないことは愚かである

 

 早い話がビスマルクは「勉強から逃げるな」と伝えたいのではないかと勝手に解釈しています。

 

 

経験に勝る知識なし

 

実際には、経験に勝る知識なし です。

 

 

『賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ』

 このビスマルクの言葉は、誰かが曲解したり、誤訳であったり、そもそも現代の一般市民に向けた言葉ではないからなのか、どうしてこう伝わったのかは私にはわかりませんが、文面そのままの意味にとらえるのは危険であると考えます。

 

 要するに、この文面からだと、経験から学ぶということは愚かである。と誤解してしまう。そう解釈することができてしまうからです。

 

 

 例えば、地理や歴史で、ある川について学ぶとします。

 

 この言葉をそのまま当てはめるのであれば、実際に川に行くよりも

その川について知っている人に聞く
川について記されている書物を集めて、読み、解析、研究して、記憶する

というのが賢いやり方となります。

 

 しかし、このやり方では、実際に川に行くのに比べると、遥かに少ない情報しか得ることはできません。

 

 実際に川に赴いて、五感をフル活用して感じることと、人に聞いたり机の上でノートを広げて学習するのとでは、得られる情報量も、脳に対する刺激も全く異なります。

 

 結果として頭に記憶される知識の質と量も、雲泥の差となります。

 

 机上の勉強からしか学ばなかった人と、実際に川に行った人とでは、他人からその川について質問された時、どちらがより詳しく川について説明できるか、という話です。

 

 厳密には、机上の学習の方が得やすいデータなどもあります。

 ただ、その川での遊びは、楽しかったのか楽しくなかったのか、とか、人はどのくらいいたのか、とか、水はどのくらい冷たくて、流れはどのくらいでその時の水量は具体的にどのくらい

 などといった、五感を使った体験によって得られた情報と、その時の心境や感想は、圧倒的に後者の方が濃密で、比較にならないほど量も多くなります。

 

失敗経験を積むことのメリット

 

 実際に経験することのメリットはまだあります。

 それが、副次的な経験と、失敗経験を増やせること。

 

 

 例えば、車でその川に行ってみたところ、道が思った以上に狭くて苦労した、とか、川に降りる道が見当たらなかったり、駐車場が少なくて苦労した、とか

 日曜にバスで行こうと思ったら、思った以上にバス停で待った、など。

 

 こういった失敗経験は、かけがえのないものとなります。

 

 

 実際に人からこの川にいってみたいんだけど、と聞かれた時に

『そっちは道がだいぶ悪くて狭いから、こっちから回った方がいいよ』とか

『アブがだいぶ多かったから、虫除け持ってった方がいいよ』

などといった、具体的なアドバイス、つまり、自身の経験から得た有益な情報を他者に伝えることができるようになるのが一つ。

 

 もう一つは、失敗経験自体を笑い話としてストックできることです。

 

『あれやってみたんだけど、すげー失敗してこんななっちゃってよ』といった、自虐ネタのように話すことができます。

 

 これは無駄な経験なんじゃないか、と懸念を抱いて何もしないよりかは、実際に経験して、貪欲に役立ちそうな体験談や思い出をストックしていった方がお得です。

 

もし何も得られなかったとしても、そこへ行っても何も得られないことが分かった。という体験談は有益な情報です。

案ずるより産むが易し

 

 

歴史から学ぶことの必要性

 

 ただ、国土交通省によると、現在日本には2万以上の河川があるとされています。

 日本の川についてなるべく多く、かつ深く知りたいと思っても、実際に川に赴いて調査するのは、全身バッキバキになるくらい骨が折れますね。

 

 そこで“勉強”という、先人が遺した歴史から学ぶ行為をすることで、最低限の時間と労力で先人の知識を吸収する方法が浮かび上がります。

 

 誰かが記した知識を得ようとする意識がなければ『日本には2万以上の河川がある』という情報すら得られません。

 

 なぜ人類が脅威的な早さで進歩、発展することができたのかは、こういった、歴史から学ぶ、他者の経験から学ぶということをしてきたからに他なりません。

 

 

バランスよく学ぶことが大事

 

 『勉強から逃げるな』といっても、勉強だけをやればいいというわけではありません。

 

 つまるところ正確には

 

愚者は自分の経験からしか学ばない
賢者は他人の経験からも学ぶことができる

 

 であり、失敗経験を重ねるという点においては両者に違いはありません。

 

 

勉強は素晴らしいものだけど、それだけでは得られないものも多いし、何より引きこもってずっと勉強するのは気が滅入るし、飽きてしまう。
一方で、実際にお出かけしたり体験したりすることは、気分転換にもなるけど、時間や労力が必要。

 

 

他人の失敗から学びなさい。あなたは全ての失敗ができるほど長くは生きられないのだから

 フランクリン・ルーズベルトの妻、エレノア・ルーズベルトの名言ですね。

 

 この言葉は『賢者は歴史に学ぶ』という面がある一方、言い方を変えると

『他人はあなたの貴重な失敗体験を求めている。だから、失敗を恐れてはいけない

強引に解釈できなくもないです。

 

 

 自分の経験から学び、失敗経験を重ねるというのは大変実りあるものです。

 一方で、時間を有効に活用するために、それだけでは学びきれないことを勉強からも吸収していく必要がある。

 

 ある数学の概念であったり、あるスポーツの楽しさだったり

 自分の経験から学ぶこと

 他者の経験から学ぶこと

 

 ものによって、より効率良く、より深く知ることができる方を選ぶ。

 これらをよく考え、時にはうまく組み合わせて学習することが大切です。